改正航空法のドローン規制の内容は

Q ドローンを用いた物品の運搬ビジネスを検討しています。航空法が改正されたと聞きましたが、ドローンの飛行に関わる規定を教えてください。(農業)

<回答者>日立コンサルティング 小林啓倫

A 2015年に相次いで起きたドローン(小型無人航空機)の事件、事故を受けて、規制強化を目的とした航空法の改正が行われました。改正内容は昨年12月10日に施行され、既に新しいルールの運用が始まっています。

 ドローンは昨年の流行語大賞に選ばれたことからも分かるように、近年、進化と普及が急速に進みました。かつての航空法ではドローンに関わる明確な規制がなく、野放しに近い状態になっていました。さまざまな事故等で問題点が浮き彫りになり、急きょ改正が行われたのです。

 新しい航空法では、無人航空機について明確な定義が定められました。この中には市販のドローンによく見られるマルチコプター(ローターを複数持つヘリコプター)だけでなく、固定翼機や飛行船なども含まれています。ただ、重量(本体重量とバッテリー重量の合計)が200グラム未満のものに関しては、省令により無人航空機から除外されています。

 ドローンに対する飛行規制も追加されました。規制は「どこを飛ばしてはいけないか」「どんな飛ばし方をしてはいけないか」という2つの柱からなります。

 まず前者ですが、従来、飛行が禁止されていた場所(空港周辺など)に加えて、150メートル以上の高さの空域と、人口集中地区(航空局のホームページで確認可能)の上空が規制対象になりました。これらの空域でドローンを飛ばす場合には、国土交通省に申請を行い、許可を得なければなりません。

 後者に関しては、夜間(日没から日の出まで)の飛行、肉眼による目視範囲外の飛行、第三者や第三者の建物・車両から30メートル未満の飛行、多数の人々が集まる催し場所の上空での飛行、危険物の輸送、無人航空機からの物の投下が規定されています。これらの飛行を行う場合も、国土交通省から承認を得る必要があります。

 国土交通省への申請手続きは、飛行開始予定日の10開庁日前までに、航空局安全部運行安全課もしくは空港事務所に対して行わなければなりません。必要な許可や承認なく飛行を行った場合、50万円以下の罰金が科されます。

周辺法規にも目配せを

さらに注意しなければならないのは他の関連法にも留意する必要がある点です。たとえば土地の所有権に関する問題です。民法では私有地の権利について、土地の上下におよぶとされています。したがって制度上では、第三者の私有地を越えてドローンを飛行させる場合、土地の持ち主から許可を得なければなりません。

 また前述の通り、ドローンは発展途上の技術のため、海外メーカーの機体が利用されることも多く、気をつけたいのが電波法です。大部分の無人航空機では、操縦に電波が利用され、さまざまな通信機器が使われます。この場合、その機器が技適(技術基準適合証明)を受けていなければなりません。海外メーカーのドローンには5.8ギガヘルツ帯の周波数を使う機種がありますが、この帯域は国内では使用が認められていないため、飛ばすと違法性を問われます。

 このようにドローンをビジネスに活用するうえで、いろいろなハードルがあるのが実情です。とはいえ、「何をしてはいけないか」というルールができたことで、「何をしてよいか」が明確になり、事業投資をしやすくなったのも事実です。ドローンビジネスの進展には追い風になるでしょう。

提供:株式会社TKC(2016年2月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。

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