65歳以上も雇用保険の適用対象に

Q 平成29年1月以降、65歳以上で新たに雇用する社員についても雇用保険の適用対象になると聞きました。法改正の内容を詳しく教えてください。(樹脂加工業)

<回答者>社会保険労務士 西巻充史

A 平成29年1月1日より雇用保険法の一部が改正され、高年齢者の雇用保険の適用が拡大されることになります。

 これまでは、65歳以降雇用された者は雇用保険の適用除外でした。同一の事業主の雇用保険適用事業所に65歳前より継続して雇用されている者についてのみ、高年齢雇用継続被保険者として適用されていたのです。離職して求職活動した場合に高年齢求職者給付金(賃金の50~80%の日額で最大50日分)を1回のみ支給、64歳以上の雇用保険料の徴収免除といった内容でした。

 それが平成29年1月1日から次のように改正されます。

  1. 65歳以降新たに雇用された者は週所定労働時間が20時間未満である場合を除き、高年齢被保険者として雇用保険が適用される。
  2. 高年齢被保険者が離職・求職活動した場合、受給要件を満たしていればそのたびに高年齢求職者給付金が支給(年金と併給可)される。
  3. 高年齢被保険者として育児休業・介護休業を開始する場合、要件を満たしていれば育児休業給付金・介護休業給付金の対象となる。
  4. 厚生労働大臣指定の教育訓練給付についても、教育訓練を開始した日において高年齢被保険者の場合、要件を満たしていれば、教育訓練給付金の対象となる。

 また平成32年4月から雇用保険料の徴収免除が廃止されます。

 雇用保険適用拡大に伴う手続きについては届け出漏れがないよう注意してください。これまで65歳未満で雇用保険が適用されている労働者が65歳を超えて平成29年1月1日以降継続して雇用されている場合は届け出不要ですが、平成29年1月1日以降新たに65歳以上の高年齢被保険者となる労働者を雇用した場合は、翌月10日までの届け出が必要となります。

 また、入社時に65歳を超えていたため現在雇用保険に入っていない社員についても、適用となる要件を満たした状態で平成29年1月1日以降も継続して雇用されている場合は、平成29年3月31日までに届け出が必要となります。

将来の人材不足に備えて

 社会保障費抑制のために特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢が引き上げられ、高年齢者は定年後も働きながら収入を得なければならなくなり、雇用者数・求職者数も増加傾向にあります。高年齢者雇用の促進がなされるよう雇用保険の適用を拡大し、国は生涯現役社会実現という名目でさらなる社会保障費抑制を推進していくものと思われます。

 一方で企業側も、団塊の世代の退職と少子高齢化により、業種によっては賃金の高騰や労働力不足が見受けられ、外国人労働者の参入や規制緩和が議論されるようになってきています。こうした中において企業は将来の深刻な人材不足に備え、積極的に高年齢者の活用を推進すべきでしょう。

 ただ、嘱託社員等として定年再雇用した場合、同一労働同一賃金の観点から、定年前後の賃金と職責・職務内容に合理性がなければ、正規職員との賃金格差を認めないという地裁判決が出されました。この点に留意しながら、65歳定年・65歳以降の継続雇用制度を導入するかどうか検討してみてください。

提供:株式会社TKC(2016年11月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

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