【産業競争力強化法】特許料引き下げの中身とは

Q 特許の出願を検討しています。産業競争力強化法に定められた、特許料引き下げの中身を教えてください。(電子部品製造)

<回答者>西川特許事務所
弁理士 西川幸慶 

A 特許権は中小・ベンチャー企業にとって有効なビジネスツールとなります。しかし、その取得や維持には多額の費用がかかり、資金力が十分でない企業には負担となります。

 日本の特許出願の多くは大企業によるものであり、総出願件数における個人や中小企業が占める割合は、米国などに比べ大幅に少ないというのが実情です。日本の技術力を支えているのは大企業ばかりではありません。中小企業などが生み出した優れた発明を埋もれさせることなく特許にすることが、わが国の成長を図っていくうえで重要です。

 このような状況を踏まえ、中小企業等の出願・権利化を支援するため、「産業競争力強化法」において特許料等の軽減措置が定められました。特許料等を軽減、または免除する措置は従来からありましたが、今回の措置では適用を受けることのできる対象者の範囲を広げるとともに、軽減額を大きくしています。これにより、中小・ベンチャー企業による特許出願が促進されることが期待されています。

 今回の軽減措置では、所定の要件を満たした中小・ベンチャー企業、小規模企業等を対象に国内・国際出願に係る料金が軽減されます。対象となるのは、次のいずれかの条件を満たす個人事業主、または法人です。

  1. 小規模の個人事業主(従業員20人以下、ただし商業またはサービス業は5人以下)
  2. 事業開始後10年未満の個人事業主
  3. 小規模企業(法人)(従業員20人以下、ただし商業またはサービス業は5人以下)
  4. 設立後10年未満で資本金3億円以下の法人

※3.と4.の法人については「大企業の子会社」のような支配法人のいる場合は除外されます。

 軽減内容としては審査請求料、特許料ともに1/3に軽減されます。ただし特許料の軽減は、第1年分から第10年分にかぎります。

 どちらも平成26年4月から平成30年3月までに特許の審査請求をおこなう案件が対象です。

申請書の提出が必須

 注意が必要なのは特許料については納付する日ではなく、審査請求の日が基準となる点です。たとえば平成26年3月以前に審査請求をしている場合は、前記期間内であっても軽減措置の対象とはなりません。逆に前記期間内に審査請求を行った場合は、特許料を実際に納付する時期が平成30年4月以降であっても適用を受けることができます。

 また、軽減措置は自動的に適用されるものではありません。軽減措置の対象者となりうる中小企業であっても、普通に審査請求や特許料の納付を行う場合は通常の料金がかかります。

 軽減の適用を希望する場合は、「軽減申請書」、「軽減を受けられる者であることを証明する書類」を提出する必要があります。軽減申請書や証明書類の具体的な内容については、特許庁ホームページに説明や様式見本が掲載されています。それらを参照して書類を用意、作成されるとよいでしょう。

 なお、中小企業等の国際的な特許取得を支援するため、国際出願に関する調査、送付手数料、予備審査手数料等の費用についても軽減措置があります。詳細は特許庁総務部(代表 03-3581-1101)にお問い合わせください。

提供:株式会社TKC(2014年4月) 

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。