Q 「グレーゾーン解消制度・企業実証特例制度」という新たな制度ができたと聞きました。制度の概要と活用の仕方などについて教えてください。(商社)
<回答者>経済産業省
経済産業政策局産業構造課
新事業開拓制度推進室 福原鉄平
A 日本経済を再興し、わが国の産業競争力を強化するためには、「過剰規制」を是正していくことが重要課題となります。規制は、国民の安全を確保するなどのため必要な面もあります。しかし、制定された時点では必要性があったものの、年月が経つ中で制定時の実体経済と現在の実態経済が変化する場合があります。そのため企業が最先端の技術を開発し新たな事業を行おうとした時に、企業が法律や政省令を読んでも、取り組もうとしている事業が規制に該当するかよく分からなかったり、規制が新事業実施の障害になっているケースが散見されています。
これに対応するため創設されたのが、「グレーゾーン解消制度」と「企業実証特例制度」です。これまで規制改革が議論されてきた規制改革会議や特区制度による全国・地域単位だけではなく、1企業の技術力等に着目して「企業単位」から規制改革の実現を図ることを目的にしています。
「グレーゾーン解消制度」は、企業の具体的な事業計画に即して、あらかじめ規制の適用の有無を明らかにすることで、規制所管省庁などとのトラブルを未然に防止し、企業がためらうことなく新たな事業に挑戦することを後押しするものです。
「企業実証特例制度」は、企業が新事業を行う際、どうしても規制に引っかかってしまうことが明らかな場合、「自社の新事業では、現行規制が担保している安全性を損なわないよう、○○・△△といった代替措置を実施するので、特例的に緩和措置を設けてほしい」といった企業からの要望を受け、規制所管省庁が規制の特例措置を講じるものです。企業は、安全性の措置を確保しながら、先行的に規制の特例措置を活用し、新たな技術開発・製品開発に取り組むことが可能となります。制度の特徴としては、①企業の具体的な事業計画に即して検討を行う制度であるため、企業にとって申請しやすく、規制所管省庁にとっても規制緩和の検討が行いやすいこと②企業が直接、規制所管省庁に申請を行うのではなく、事業所管省庁に申請を行う仕組みであるため、事業所管省庁の手厚いサポートが得られる仕組みになっていること──などがあげられます。
グレーゾーン解消制度の具体事例を一つご紹介しましょう。ドラッグストア等で利用者が自ら採血した血液について、検査結果を通知するサービスの提供を全国的に展開したいと考えた中小企業から、「利用者が自己採血する行為が、医師法上で規定している『医業』に該当するか否か」という照会がありました。その結果、医業には該当しないという回答を規制所管省庁から得られたことで、医業とヘルスケアサービスのグレーゾーンが解消し、本サービスを提供するドラッグストア数が飛躍的に伸びたのです。その他にも、2014年1月20日の制度発足から現在まで、両制度合計で100件を超える相談が寄せられており、うち30件弱の申請を受理し、結果等を通知しているところです。今後も、事業所管省庁として、企業単位で規制改革・緩和に挑まれる企業の方々にできる限りサポートを行っていく方針を掲げているので、相談事項などがある場合は、経済産業省経済産業政策局新事業開拓制度推進室または最寄りの地方経済産業局にお問い合わせください(下記URL参照)。
(URL:http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/)
提供:株式会社TKC(2014年12月)
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。