オープンファクトリーをはじめたい

Q 地域の町工場を巻き込んでオープンファクトリーに取り組みたいと考えています。オープンファクトリーを行う上でのポイントや注意点を教えてください。(金属部品製造業)

<回答者>(一社)おおたクリエイティブタウンセンター 副センター長 東京都立大学准教授 岡村 祐

A オープンファクトリーは、地域の工場を期間限定で一斉公開するイベントで、工場、来訪者、企画者、事務局が一緒になって「ものづくり」および「ものづくりのまち」を盛り上げます。東京都大田区では「おおたオープンファクトリー」と題したイベントを、2012年2月に東急多摩川線沿いの下丸子駅・武蔵新田駅周辺エリアからスタートし、21年11月に11回目を開催しました。近年、わが国では30を超える地域で実施されています。

 元来、工場を見学したいというニーズは高いのですが、工場の人的、スペース的キャパシティーの制約、秘密保持契約への配慮、専門的な技術、機械、製品に関する情報伝達の難しさなどから、これまで一般の来訪者を受け入れることは避けられてきました。しかし、オープンファクトリーという地域やまちを意識した「地域活性化イベント」のもとで、近年多くの工場が上記の障壁を乗り越えて、工場の一般公開に取り組んでいます。

 まず、地域全体で取り組むこととしては、イベントの情報発信、デザイン面でのクオリティーコントロール、そして、来訪者の地域内での回遊性の向上が挙げられます。とくに、ものづくりのまちを訪れた来訪者にとっては、効率よく複数の工場を巡りたいものです。そのためには、ある程度の工場の集積と情報提供が必要です。分かりやすい地図の作成・配布(近年はスマートフォンで見られるデジタルマップが好まれます)はもちろんのこと、徒歩圏に収まらない広域エリアでの開催の場合は、バスなどの二次交通の提供も課題になってきます。

「ストーリー」を伝える

 次に、工場が取り組むこととしては、自社の歴史、経営者・職人の自分史やものづくりへの思いなど、来訪者が共感できる「ストーリー」を発信することです。そして、技術、材料、機械、製品などの専門的な内容を、見本市や展示会とは異なる語り口で平易に説明することで、来訪者のものづくりへの理解が深まります。その上で、ものづくりの体験や商品の販売など、来訪者にとって魅力的なコンテンツを付加してみてはどうでしょうか。

 おおたオープンファクトリーでは、取り組んでみたいとの声に応えるために、「工場オープンマニュアル」を作成し、参加される工場の不安解消や新規参加工場の勧誘に活用しています。また、オープンファクトリーへの参加によって工場が受ける恩恵も伝えるようにしています。ご近所に工場を知ってもらえる、新たな仕事の受注につながる、社員教育の場になる、メディア通じた企業PRの機会になるといった声がこれまでに寄せられています。

「工場オープンマニュアル」はおおたオープンファクトリーのHPで公開していますので、ぜひご覧ください。オープンファクトリーの仲間が増えることを楽しみしています。

提供:株式会社TKC(2022年5月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

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