<回答者>社会保険労務士 小岩和男
A 障害者雇用促進法により、すべての事業主は法定雇用率以上の割合で障害者を雇用する義務があります(障害者雇用率制度)。この法定雇用率は原則として5年ごとに見直しが行われ、2018年4月1日以降、民間企業では2.0%から2.2%に引き上げられることになりました(『戦略経営者』 2018年3月号40頁・図表1参照)。雇用義務を履行しない事業主に対しては、ハローワークから行政指導がなされます。以下、今回の見直しにおけるポイントを解説します。
・対象となる企業
雇用義務が生じる民間企業の範囲は、従来の従業員50人以上から45.5人以上に広がりました。雇用率の適用単位が事業所ごとではなく、企業全体で計算される点に留意ください。
・対象となる障害者
身体障害者・知的障害者に加えて、精神障害者も雇用義務の対象者になりました。
・障害者雇用納付金の取り扱い
障害者雇用納付金制度とは、法定雇用率を下回っている事業主(従業員100人超)から、法定雇用障害者数に不足する人数に応じて納付金を徴収し、それを財源に法定雇用率を上回っている事業主に対して、障害者雇用調整金や奨励金、各種助成金などを支給する制度のことです。
この障害者雇用納付金についても、新たな法定雇用率で算定することになります。具体的には、2019年4月1日から同年5月15日までの間に申告する分(=申告対象期間が2018年4月から2019年3月まで)から適用されることになります。
・障害者雇用納付金
不足1人あたり月額5万円が徴収されますが、2015年4月から2020年3月まで常用労働者100人超200人以下の事業主は月額4万円に減額されることになっています。ただし、納付金を納めることにより、法定雇用率達成義務が免除されるわけではありませんので、注意してください。
・その他
毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告する義務があります。また、障害者の雇用の促進と継続を図るため「障害者雇用推進者」を選任するよう努めなければなりません。
・今後の改定
2021年4月までの間に、民間企業の法定雇用率は2.3%に引き上げられることが決定しています(同・図表2参照)。なお、国等の機関も同様に0.1%引き上げられます。企業の範囲も従業員規模43.5人以上の企業に拡大される見込みです。次回の引き上げ時期等詳細は、労働政策審議会において今後議論がなされるため、動向を注視しましょう。
(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。