「ホワイト物流」推進運動に参加するには

Q「ホワイト物流」推進運動という言葉を頻繁(ひんぱん)に耳にするようになりました。制度の概要と組織として何をどのように取り組めば良いのか教えてください。(一般貨物自動車運送業)

<回答者>しのはら労働コンサルタント代表 社会保険労務士 篠原宏治

A「ホワイト物流」推進運動とは、トラック運転者の不足が深刻となっていることに対応し、国民生活や産業活動に必要な物流を安定的に確保するとともに、日本経済の成長に役立つことを目的として、①トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化②女性や60代以上の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現に、国土交通省が関係省庁と連携して取り組んでいる運動のことです。

 物流業界の抱える問題を解決するためには、物流事業者だけでなく荷主企業や納品先企業の理解や協力が不可欠であることから、業種を問わず広く「ホワイト物流」推進運動への賛同企業を募っています。

 賛同企業は「ホワイト物流」推進運動ポータルサイトで公表され、2019年10月末時点では徳島県と佐賀県を除く45都道府県、604社が賛同企業として掲載されています。

目立つ運転者の過重労働

「ホワイト物流」推進運動の背景にあるのは、過酷な労働環境によって引き起こされた深刻なトラック運転者不足です。

 厚生労働省が策定している「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、長時間労働者が多く、過労死等が多く発生している七つの業種・職種が対策の重点業種として定められており、「自動車運転従事者」もその一つに挙げられています。

 自動車運転従事者は、特に過重労働による健康障害が発生している職種です。2017年度に過重労働が原因で脳・心臓疾患を発症したとして労災認定された件数は236件(うち過労死が92件)ですが、そのうち自動車運転従事者の労災認定件数は89件(うち過労死が35件)で4割弱を占めています。次に多いのが「法人・団体管理職員」の21件(うち過労死が9件)であることからも、自動車運転従事者の過重労働による健康障害の発生率が飛び抜けて高いことがわかります。

運動への参加の流れ

「ホワイト物流」推進運動への参加は、所定の様式で作成した「自主行動宣言」を事務局に提出し、「ホワイト物流」推進運動の趣旨と必須項目に賛同表明することで行います。

「自主行動宣言」の所定様式は「ホワイト物流」推進運動のポータルサイトからダウンロードすることができます。事務局への提出もポータルサイトの専用フォームから可能で、受け付けは随時行っています。「自主行動宣言」では、必須項目への賛同表明に加えて推奨項目として挙げられている6分類28項目の中から、自社としてさらに取り組める項目がないか検討することが求められています。

 推奨項目に取り組むか否かは企業の任意であり、また、推奨項目以外の取り組みであっても自主行動宣言に加えることができます。さらに、自主行動宣言を提出した後でも随時内容を変更することが可能ですので、社内で合意しやすいものから早期に宣言を行い、段階的に内容を充実させていくことをお勧めします。

提供:株式会社TKC(2020年1月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

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