ライブコマースの効果的な導入方法

Q 大手百貨店などがネット上の実演販売「ライブコマース」に参入していると聞きました。導入する際に留意しておくべきポイントと注意点を教えてください。(中古品小売業)

<回答者>三菱UFJリサーチ&コンサルティング デジタルトランスフォーメーション推進部 河合一憲

A 社会環境が激変するなか、消費者の購買行動も変わりつつあります。企業は電子商取引(EC)やフードデリバリーサービスなど、インターネットを活用したサービスに注力しています。

 他方、消費者は「こだわり」を抱く商品に、強い購入意欲を示しはじめています。「自分が好きなモノ」、「関心があるコト」には、時間とコストをかけて吟味するようになっているのです。こうした動きは「消費2.0」といわれ、消費マインドは拡大しているものの、コロナ禍で歯止めがかかるという、ジレンマの中にあります。

 そのはざまを埋める手段が「ライブコマース」といえます。リモート環境でありながら、店舗での購買体験を提供でき、消費者の潜在ニーズを満たす施策として有効です。ライブコマースを始めること自体は、あまり難しくありません。何を、どこで売るか(どのツールを選択するか)、誰が出演するか、どのように集客を図るか(マーケティング施策の検討)、どのような結果を見込めるかを整理できれば、容易に開始できます。

 ただし、この検討の流れは一貫していなければなりません。何を売るかを明確にすることによってターゲット層が決まり、ターゲット層が頻繁に利用するツールを選ぶことで、販促効果も上がりやすくなります。具体的には、インスタグラムやユーチューブをはじめとするソーシャルメディアを活用したり、自社でECサイトを開設していれば、サイトで独自に行うことも可能です。

 カギとなるのが、出演者の選定です。有名タレントやインフルエンサーを活用すれば、多くの人々が訪問してくれるでしょう。ただ、相応のコストがかかることを覚悟しなければなりません。実際、社員が出演しているケースが一般的です。社員は商品知識も豊富であるため、演出をしっかり準備できれば、大きな効果が期待できます。

大げさな言い回しに注意

 ライブコマースにおいても、閲覧者数や離脱率、購入率、視聴時間といったデータを入手できます。購入決定にいたったタイミングや、閲覧を中断してしまったページなどを分析すれば、次回以降の配信に生かすことができます。

 運営上の注意点として、配信時間と内容があります。ライブコマースでは、1商品につき5分程度が最適と言われています。時間があまりに長いと離脱につながる一方、短すぎても商品のイメージをつかめなくなります。そのため、複数の商品を用意しておき、次々に紹介していく方法をおすすめします。大手百貨店のライブコマースにおいても、約1時間の配信で8商品ほどを紹介しています。

 配信内容では、出演者は商品のアピールに熱が入るあまり、大げさに話してしまいがちです。特に出演者が社員の場合、注意する必要があります。”炎上”するのもやっかいですが、危険なのは法にふれることです。例えば、データや効果を大げさに伝えてしまうと、景品表示法に抵触(ていしょく)してしまいます。入念なリハーサルを実施したうえで臨むことが何より肝要です。

 ライブコマースがコロナ禍にフィットした販売方法であることは間違いありません。同時に、実店舗やECサイトでの販売も、依然大きな価値があります。リアルとオンライン、さまざまな販売促進策と連携させつつ、推進することをおすすめします。

提供:株式会社TKC(2021年8月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

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