分煙と全面禁煙、選択すべきはどっち?

Q 受動喫煙に対する社会の目が年々厳しくなっています。法整備の現状と、分煙と全面禁煙どちらを選択すべきか教えてください。(飲食店)

<回答者>健康経営応援合同会社 代表社員 荒島英明

A 「客席面積100平方メートル以上の店舗」での原則屋内禁煙を柱とする改正健康増進法が平成32年4月1日から施行されます。この改正で飲食店全体の45%は「全席禁煙」となり、55%が「喫煙」や「分煙」を選べる店舗になると推計されています。対策を怠り喫煙場所以外での喫煙をさせた、あるいは基準に適合しない「喫煙専用室」を設置した等の管理権原者等には最大50万円の過料、喫煙した客や従業員には最大30万円の過料が科されます。

 一方、東京都ではこのほど、「従業員を雇っている店舗」での原則屋内禁煙を柱とする受動喫煙防止条例が成立しました。この条例により84%の店舗が禁煙店舗になると推計されています。同条例では義務違反者に対し5万円以下の過料が科されます。施行期日は国と同じ日ですが、「喫煙」「禁煙」等のステッカーの店頭表示を平成31年9月1日に行う必要があるので、実質的な準備のめどはこの日となります。

煙流出防止は多額の投資必要

 受動喫煙対策で分煙を実行する時は、喫煙専用室等を設置することになります。助成金(助成割合は飲食店が費用の3分の2、一般は2分の1で助成限度額100万円)が出ますが、実際に分煙店舗化するには喫煙スペースに喫煙専用室と同等の煙の流出防止措置を施し、空調も完全に別系統にする必要があるので、多額の設備投資が必要になるでしょう。

 未成年への配慮も必要になってきます。国の改正法では、喫煙スペースに20歳未満の従業員や客を立ち入らせることはできません。喫煙店舗とした時は20歳未満の店舗従業員は採用できなくなり、20歳未満が含まれるグループ客の受け入れも不可能になります。

 分煙店舗とした時も、喫煙スペースに20歳未満の従業員が立ち入らないような店内レイアウトおよびサービス提供方法の作成とその順守教育、オペレーションの徹底、勤務シフト作成時の確認の徹底等が必要となります。喫煙店舗と同様に予約時・入店時の年齢確認もしなければなりません。さらに従業員の募集に際して、受動喫煙対策を明示する義務や、従業員の受動喫煙被害の相談窓口等を設置する義務も新たに課されます。

 経営者からは「分煙店舗にすれば喫煙客・非喫煙客を両方取り込める」という意見がありますが、喫煙客から「自由に吸いにくい」、非喫煙客から「煙が流れてくる」と思われ、結果として両者から敬遠されてしまう可能性も少なくないと思います。

 こうなると全面禁煙の優位性は明らかです。禁煙化による減収が気になるかもしれませんが、喫煙常連客が一時的に減っても、全体の客足は少しずつ戻ると言われています。逆に「全席禁煙」を選んだ方が、煙を嫌う新規客が増加し、20歳未満を含む客の取りこぼしがなくなるので、かえって売り上げが増加するかもしれません。店舗オペレーションも楽になります。

 日本の喫煙率はすでに2割を切っています。「全席禁煙」店舗という働きやすい職場の方が従業員の充足率・賃金単価ともに優位になり、実際に、社内完全禁煙という「従業員の健康を守るポリシー」を打ち出した企業では、従来より優秀な従業員を採用できるようになってきています。これを機に全従業員禁煙、あるいは就業時間中禁煙という「健康経営企業・ホワイト企業」を目指されてはいかがでしょうか。

提供:株式会社TKC(2018年8月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。

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