航空産業の国際認証制度「ナドキャップ」

Q 将来的に航空産業への参入を検討しています。中小企業でも取得できる国際認証制度があると聞きましたが、詳細について教えてください。(機械加工業)

<回答者>三菱UFJリサーチ&コンサルティング
関 恵子 

A 世界の民間航空機数は、アジア・太平洋地域を中心とした航空旅客数の伸びなどを背景に、今後20年間で約2倍に成長することが予測されています。また、日本においても、今年の4月に成田空港にLCC専用ターミナルがオープンするなど、航空機製造業や航空機運送業などの市場拡大が期待されています。

 航空機産業は部品点数が自動車産業の100倍の300万点ともいわれ、産業構造の裾野が広いことが特徴で、中小企業にとっても、機械加工業をはじめ、さまざまな分野のものづくり産業からの参入が可能です。

 また、航空機産業の生産現場では、エアバスやボーイングなどの完成機メーカーが求める高い品質管理水準の確立・維持が求められます。特に、機械加工、熱処理、表面処理、非破壊検査などで「特殊工程」と呼ばれる作業工程を受注する企業は、製造やサービスのプロセスの妥当性を示すため、設備・工程・人を承認する国際的な認証プログラム「Nadcap(ナドキャップ)」を事業所ごとに取得し、原則1年単位で更新することが不可欠となります。 

日本では134事業所が取得

 このナドキャップの2014年の全受審件数は5074件で、アジア地区のシェアは16%程度ですが、近年増加基調にあります。また2015年1月現在、日本国内では、全134事業所が278の認証を取得しており、中小企業は67事業所(5割)を占めています。全18の特殊工程中、非破壊検査や熱処理、化学処理のシェアが高い点も特徴です。

 認証の審査・管理運営などは、米国に拠点を置く非営利団体PRIが行っています。認証取得に際し、PRIへ審査資料を事前提出の上、現地審査を受け、不適合事項の是正要求などに対処します。関連情報の収集や手続きは、PRIのホームページ「eAuditNet」から行うため登録が必要です。なお、必要情報や文書作成、PRIとの連絡調整などは、原則すべて英語ですが、PRI日本事務所のホームページなどから一部の日本語情報は確認することが可能です。

 現地審査は平均3日程度ですが、認証取得済み中小企業の約5割は、初回審査の準備に1~1.5年をかけています。また、受審費用は50~100万円程度ですが、このほか、英語資料の翻訳や文書の英語化の費用、通訳費、取得後の認証の維持・管理のための品質管理部門の体制拡充費、場合によっては新たな設備投資費も必要です。

 航空機産業は、初期投資が高額となる一方、事業が軌道にのれば中長期的に安定した収益確保も期待できます。しかし、受注実績や正しい知識がないまま認証を取得し、受注や売り上げの拡大につながらずに更新をとりやめた中小企業の例もあるので、既存事業とのバランスを勘案した参入見極めが大切です。実際に、取得済み中小企業の8割は、完成機メーカーや国内重工メーカーなどとの取引後に認証を取得しているので、航空機産業参入時に国際規格JISQ9100を取得し、実績を重ねて品質管理水準を高めておくことが有効です。

提供:株式会社TKC(2015年10月) 

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

▲ 戻る