改正JIS法が中小企業に与える影響

Q 改正JIS法が施行されたと聞きました。中小企業でもJIS規格を制定できるそうですが、詳細について教えてください。(玩具製造業)

<回答者>経済産業省 産業技術環境局 基準認証政策課 上原英司

A「標準を作る」というと、「どこか縁遠い話で、自社にはあまり関係がなさそうだ」との印象をお持ちになる方が多いかもしれません。日本では、歴史的に国や業界団体が中心となって標準化活動に取り組んできたことから、個別の企業においては、このような認識が定着しているようですが、経済産業省では、企業も含めより多くの方に標準というツールを活用してほしいと考え、各種の取り組みを講じています。

 また今年7月1日に「工業標準化法」が「産業標準化法」に改正・施行され、「日本工業規格(JIS)」は「日本産業規格(JIS)」に変わりました。工業標準化法は鉱工業品の品質の改善、生産・流通・使用または消費の合理化のため日本工業規格(JIS)の制定とJISマーク表示制度を定めた法律でしたが、産業標準化法の施行により、対象範囲がデータ・サービス分野等にまで拡大されたことで、より多くの方に標準というツールを活用してもらえるチャンスが増えると考えています。

 今般の改正では、図のとおり、主に①JISの対象拡大・名称変更、②JIS制定の民間主導による迅速化、③JISマーク表示制度違反の罰則の強化、④国際標準化の促進を行いました。

 このような法改正による具体的な個別の動きとしては、次のような取り組みを進めています。まず①については、今年7月1日、サービスJIS第1号として、空港の案内ロボットや介護施設の介護ロボットなど、ロボットを使ったサービスが実用化しつつある中、人とロボットの安全な共存に向けた安全性確保のガイドライン規格を制定しました。

 また②については、今年9月18日、一般財団法人日本規格協会(JSA)を、一般機械、電子機器及び電気機器などの10区分44の範囲において、認定産業標準作成機関として認定しました。

個別企業でも制定できる

 中小企業による標準の具体的な活用事例をご紹介します。株式会社ワイピーシステムは、緊急時にガラス窓を破砕しシートベルトを切断する「脱出支援ツール」を製造していました。しかし、市場に出回る類似製品には十分な能力がないものもあったことから、ユーザーの安全・安心を確保するとともに、製品に対する信頼性が失われ、結果的に市場が広がらない状況を回避するため、「自動車用緊急脱出支援用具」のJISを制定し、製品を取り巻く市場環境の改善に取り組みました。

 また株式会社悠心は、自社が開発した「開封後も内容物の鮮度を保てる液体容器」に関し、その性能(酸化度合い)の測定方法に関するJISを制定することで、性能の評価環境を整える取り組みを進めました。これまで付き合いのなかった他業界からも引き合いがあるなど、技術を広げることにも役立ったと聞いています。その他事例や標準化の活用方法については、下部参考URLをご参照ください。

提供:株式会社TKC(2019年11月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。

▲ 戻る