消費税転嫁拒否取り締まりの実態

Q いまのところ消費税は転嫁できていますが、10%への引き上げが不安です。転嫁を拒否する買い手の行為はどの程度取り締まられているのでしょうか。実態を教えてください。(運送業)

<回答者>中小企業庁事業環境部
取引課 猪鼻俊男 

A 中小企業庁では、平成25年10月に消費税転嫁対策室を設置(全国の経済産業局等にも同対策室を設置)し、約500名の消費税転嫁対策調査官(転嫁Gメン)が、中小企業・小規模事業者等に対する消費税の転嫁拒否等の行為を防止するための監視・取り締まりを実施しています。具体的には、中小企業・小規模事業者等に対して、転嫁拒否に関する大規模な書面調査等を実施するとともに、転嫁拒否行為に関する情報収集、相談対応のため転嫁Gメンによるパトロール活動などを行っています。

 これらの転嫁Gメンによる調査の結果、消費税の転嫁拒否行為が行われている場合には、転嫁拒否による不利益の回復など必要な指導を行います。また、重大な転嫁拒否等の行為を行った事業者に対しては、公正取引委員会が勧告を行い、その旨を公表します。

 これまでの転嫁拒否行為に対する監視・取り締まり対応実績としては、2447件の指導、32件の勧告(平成28年1月現在。公正取引委員会および中企庁の合算)を行っており、今後とも、違反行為に対しては厳正に対処していきます。

 なお、中小企業庁が行っている「消費税の転嫁状況に関するモニタリング調査」では、事業者間取引では、85.8%、消費者向け取引では、71.8%の事業者が「全て転嫁できている」と回答しています。他方で、「全く転嫁できていない」と答えた事業者は、事業者間取引では3.4%、消費者向け取引では5.4%となっています(平成28年1月調査)。

転嫁拒否行為の主な事例

これまで指導が行われた違反では、①製造業者(買い手)が、部品メーカー(売り手)に対し、消費税率の引き上げ後の納入価格(税込み)について、消費税率の引き上げ前の納入価格(税込み)と同額に据え置いていたケース(同様のケースとして、スポーツ指導業務、運送業務、販売委託、工事請負業務、執筆料等の各種業務委託や店舗等の賃借料など)や、②建設業者(買い手)が、警備業者(売り手)との間で取り決めていた委託代金を支払う際に、消費税率の引き上げ分の一部を差し引いて支払っていたケースなどがあります(詳細は「消費税転嫁の手引き」を参照してください)。

 中小企業庁では、転嫁拒否行為に対する相談窓口を設置しています。中小企業4団体にも窓口を設置し、消費税に関する相談を受け付けているほか、中小事業者の取引上の悩みを相談員や弁護士が受け付ける「下請かけこみ寺」も利用できます。内容はもちろんのこと、相談を受けたこと自体も秘密として取り扱うので、消費税の転嫁拒否等で困っている企業は遠慮することなく相談してください(下記URL参照)。

 また、中小企業庁および中小企業4団体では、消費税転嫁対策に関する講習会を実施しています。事業者および税理士の方々の認識不足等から違反行為が行われるケースもあるため、こうした講習会等への参加を通じて正しい理解を得ることも大事です。

URL

①相談窓口(電話):http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/shouhizeitenkarenraku.htm

②申告情報相談窓口(WEB):https://www.shinkoku.go.jp/shinkoku/shouhizei1_001

③下請かけこみ寺:https://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/

提供:株式会社TKC(2016年4月) 

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。

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