食品表示法施行で栄養成分表示が義務化

Q 食品表示法の猶予期間が終わり、半年後に施行されると聞きました。中小事業者はどんな点を念頭に置いて準備すればよいでしょうか。(食料品小売業)

<回答者>食品表示アドバイザー 垣田達哉

A 2015年に施行された食品表示法は、5年間の猶予期間が20年3月末に終了します。同年4月1日以降に製造・加工された食品は、新表示に対応していなければ販売することができません。

 改正点は多岐にわたり、なかでも中小事業者にとって最も負担がかかると見込まれるのが、栄養成分表示の全面義務化です。従来は「低カロリー」、「減塩」、「カルシウム豊富」、「ビタミンCたっぷり」といった栄養に関する表示をした場合のみ、栄養成分を表示する義務がありましたが、今回の改正で、容器包装された加工食品すべてに対象が拡大されました。

 なお、バラ売り、はかり売り商品や「製造者と販売者が同一で、同一施設内、敷地内で販売する和菓子店、洋菓子店、ベーカリー(パン屋)のような製造業」は対象外となります。容器包装された食品でも「表示可能面積がおおむね30平方センチメートル以下の食品」は表示を省略できます。30平方センチメートルというと5センチメートル×6センチメートルの包装紙で、のりしろが一切なく包まれた食品になります。この面積は意外と小さいものです。具体例を挙げると、サイコロキャラメルより大きな商品は対象になると考えてください。消費者庁は、市場に流通する約9割の加工食品に栄養成分表示がなされると予測しています。

 小売店内で製造、加工された弁当や総菜などの商品は事業者の負担軽減のため、栄養成分表示を省略できることになっています。ただし、仕入れ商品や店外(加工センターや他店舗)で製造、加工された商品は栄養成分を表示しなければなりません。つまり、これまでカロリーや塩分などがほとんど表示されていなかった弁当や総菜が、コンビニエンスストアと同じように表示しなければならなくなるわけです。

小規模事業者も対象に

 小規模事業者は栄養成分表示を省略できますが、小規模事業者の製造した食品を小規模でない事業者が販売する場合は、表示を省略できない点に注意してください。たとえば小規模事業者に該当しないスーパーマーケット等は、小規模事業者が製造、加工した食品を販売する場合も栄養成分表示は必須になります。ただ、前述のとおり小規模事業者には栄養成分を表示する義務がないため、誰が表示を行うのかという問題が発生します。考えられるのは製造した小規模事業者か問屋、もしくは小売店になります。もっとも、小売店が小規模事業者商品の栄養成分を表示するのは、分析費用や責任範囲を考慮すると非常に難しく、小売店は栄養成分表示のない商品を将来仕入れないことになるかもしれません。

 栄養成分表示を担当するのは、栄養士等の資格を持っている人でなくてもかまいません。食品のレシピから、成分表などを参考にして計算を行うことになります。ただ、食材や調味料等の重量を正確に把握するのはもちろん、1商品あたりの栄養成分計算にかかる時間と費用、計算対象となる商品の点数なども確認しなければなりません。今回の法施行に該当する事業者は、一刻も早く取り組むべきです。

提供:株式会社TKC(2019年10月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

▲ 戻る