「一般事業主行動計画」の策定対象が拡大

Q 現在従業員が130人在籍しているのですが、来年の4月以降、女性活躍に関する計画の策定が義務づけられると聞きました。どのように対応すればよいか教えてください。(自動車部品製造業)

<回答者>特定社会保険労務士 矢島志織

A ご質問のとおり、2022年4月1日より常時雇用する労働者(雇用形態にかかわらず期間の定めなく雇用されている労働者、または1年以上雇用されている労働者等)が101人以上の中小事業主は、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画(以下、行動計画)の策定・届出等が義務化されます。同法は16年に施行されたもので、現在、常時雇用する労働者が301人以上の事業主に対し、女性活躍に関する行動計画の策定・届出及び情報の公表を義務づけています。

 今回の改正ではその対象が「常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主」に拡大されることになり、義務化の対象となる事業主は次のような取り組みが求められます。

●ステップ1 女性労働者の活躍状況の把握・課題分析
 まずは、次の4項目について自社の現状を確認し、女性の活躍状況を把握します。活躍状況を把握したら、女性活躍に関する課題を分析します。
①採用した労働者に占める女性の割合
②男女の平均継続勤務年数の差異
③労働者の各月の労働時間(健康管理時間)の状況
④管理職に占める女性の割合

●ステップ2 状況把握、課題分析を踏まえた行動計画の策定・社内周知・外部へ公表
①行動計画の策定
 ステップ1の課題を解決するための数値目標と取り組みを盛り込んだ行動計画を策定します。
②行動計画の社内周知
 行動計画を社内の見やすい場所へ掲示し、全労働者に周知します。

●ステップ3 行動計画を策定した旨の届け出・女性の活躍に関する情報の公表
①行動計画を策定した旨の届け出
 行動計画を策定したら、『一般事業主行動計画策定・変更届』を管轄の都道府県労働局へ届け出ます。
②情報の公表
 女性の活躍に関する情報を、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」に登録します。

企業価値の向上につなげる

 これらの取り組みについて、どのように手をつければよいか分からないという事業主の方は、「女性活躍推進アドバイザー」を活用するのも1つの方法です。無料で個別企業訪問などの支援を受けられます。また、女性の活躍推進に関する状況が優良である事業主は、「えるぼし」「プラチナえるぼし」認定を受けることができます。認定を取得すると公共調達等で有利になりますし、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を通常よりも低金利で利用できます。

 さらに、女性活躍をうまくPRできると、優秀な人材の確保や企業ブランドの向上も期待できます。このように、女性活躍に関する取り組みを戦略的に実践することで企業価値の向上につながります。今回の法改正により行動計画の策定が義務となる事業主はもちろん、常時雇用する労働者が100人以下の事業主も経営戦略の1つとして、女性活躍の推進に取り組まれることをお勧めします。

提供:株式会社TKC(2021年12月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

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