子ども・子育て支援法の改正

Q このほど、子ども・子育て支援法等改正案が成立したと聞きました。法律の概要と留意するべきポイントを教えてください。(機械設計業)

<回答者>特定社会保険労務士 森 慎一

A 子ども・子育て支援法等改正案(以下、改正法)が2024年6月、国会で成立しました。改正法の内容は多岐にわたりますが、主要な7つの改正点を解説します。

①児童手当の抜本的拡充
 
児童手当の支給期間が中学生までから、高校生年代まで延長されます。支給要件の所得制限が撤廃され、第3子以降の支給額を月3万円に、支払月が年3回から年6回(偶数月に支給)となります(24年10月施行)。

②妊婦のための支援給付・妊産婦等包括支援事業の創設
 妊娠期の負担軽減のため、妊婦のための支援給付(原則10万円)を創設し、妊婦等包括相談支援事業と効果的に組み合わせる支援を行うものとされています(25年4月施行)。

③こども誰でも通園制度の創設
 満3歳未満で保育所等に通っていない子どもを対象に、月一定時間までの枠内で、保育所等に預けることが可能な制度が創設されます(26年4月施行)。

④出生後休業支援給付の創設
 現行の育児休業給付は、休業開始から通算180日までは賃金の67%(手取りで8割相当)、180日経過後は50%が支給されています。改正法では、男性の育休取得促進のため、男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内に、被保険者とその配偶者の両方が14日以上の育休を取得する場合、最大28日間、賃金の13%相当額の給付が上乗せされます。これにより、給付率が80%(手取りで10割相当)となります。配偶者が専業主婦(夫)や、ひとり親家庭の場合等には、配偶者の育休の取得を求めずに上乗せが受けられます(25年4月施行)。

⑤育児時短就業給付の創設
 雇用保険の被保険者が2歳未満の子を養育するために時短勤務をしている場合、時短勤務中に支払われた賃金額の10%を給付する育児時短就業給付が創設されます(25年4月施行)。

⑥育児期間中の国民年金保険料免除措置の創設
 自営業、フリーランス等の育児期間中の支援措置として、実父等の場合は、子を養育することになった日から子が1歳になるまでの最大12カ月間、産前産後免除(4カ月)が適用される実母の場合は、産後免除期間に引き続く9カ月間が対象期間とされ、その間の国民年金保険料が免除されます。なお、当該期間における基礎年金額は満額が保障されます(26年10月施行)。

⑦子ども・子育て支援金制度の創設
 これらの施策(②の一部を除く)の財源として、医療保険の保険料とあわせて徴収される子ども・子育て支援金制度が26年度から段階的に導入されます(すでにある「子ども・子育て拠出金」も存続)。支援金制度により発生する負担については、こども家庭庁の資料では「数年後の賃金水準によることから、試算することは難しい」としたうえで、協会けんぽの被保険者1人当たり平均で26年度は400円(月額)、27年度は550円(同)、28年度は700円(同)と試算されています。事業主についても同額の負担が生じることになります。なお、国会の付帯決議で、給与明細等に、支援金を医療保険料等と区別して表示する取り組みが広がるよう検討を行うとされているので、この動向にも注意が必要です。

 今般の改正により、育児への経済的支援が充実するため、男性も含めて育休等の制度利用者が増えると考えられます。人材確保の観点からも、育児と仕事が両立しやすい職場の環境整備を進めることが大切です。

提供:株式会社TKC(2024年8月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

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