財形制度を導入したいのですが

Q 福利厚生として、財形制度を導入したいと考えています。財形にはどのようなメリットがあり、また、導入するにはどうすればいいのでしょうか。(印刷業)

<回答者>厚生労働省 雇用環境・均等局 勤労者生活課長 大隈俊弥

Q 財形制度とは?

A 勤労者財産形成促進制度(財形制度)は、給与からの天引きにより積立を行う「財形貯蓄」や、財形貯蓄を行う方に住宅取得やリフォームの資金の貸付けを行う「財形持家融資」などにより、働く方の財産形成を国と事業主が支援する制度です。この制度は、1971年にはじまり、今年(2022年10月時点)で51年目を迎えています。22年3月末時点で、財形貯蓄は669万8千件、財形融資は5万8,871件ご利用をいただいています。

Q 財形貯蓄には3種類あるとお聞きしましたが。

A 財形貯蓄は、一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の3つからなります。
 まず一般財形貯蓄ですが、勤労者が、金融機関などと契約を結んで3年以上の期間にわたって、定期的に、つまり毎月または夏季・年末のボーナス時期などに賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立てていく、目的を問わない使途自由な貯蓄のことです。契約時の年齢制限はありませんし、複数の契約もできます。
 次に財形住宅貯蓄ですが、契約締結時に満55歳未満の勤労者が金融機関などと契約(1人1契約)を結んで5年以上の期間にわたって定期的な賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立てていく、持家取得または持家の増改築(リフォーム)等を目的とした貯蓄のことです。
 最後に財形年金貯蓄ですが、契約締結時に満55歳未満の勤労者が金融機関などと契約(1人1契約)を結んで、5年以上の期間にわたって定期的な賃金からの控除(天引)により、事業主を通じて積み立て、60歳以降の契約所定の時期から5年以上の期間にわたって年金として支払いを受けることを目的とした貯蓄のことです。

Q 財形貯蓄制度導入による社員のメリットは?

A まず、賃金からの控除(天引)ですから、手間なく確実に財産づくりができます。月々1,000円から気軽に積立できるのも魅力です。また、先程お話しした財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて元利合計550万円、財形年金貯蓄のみの場合で、生命保険または損害保険の保険料等に係るものにあっては払込ベースで385万円に達するまで利息が非課税になることも利点です。なお、財形年金貯蓄については、年金の支払が終わるまで非課税措置が継続され、老後生活の安定に役立ちます。
 後述しますが、財形持家融資制度は、この財形貯蓄制度を利用していることが必須です。財形持家融資制度を利用することで、事業主等を通じて、または直接に、安心・低利な公的住宅ローンを最長35年間受けることができます。なお、リフォームのための資金にも利用することができます。

Q 同じく、企業としてのメリットは?

A 企業としては、従業員の生活の安定を支援し、従業員の仕事に対するモチベーションや企業への信頼感を高めることができます。加えて、従業員の資産形成を充実させることで、仕事に集中できる環境が整い、従業員の定着性向上にも効果的です。さらには財形持家融資制度を利用することで、従業員の一大イベントである持家取得を支援し、従業員の満足度を高める効果が期待できます。
 なお、財形貯蓄を導入すると、ハローワーク(公共職業安定所)の求人票への表示により、福利厚生が充実している会社としてのアピールも可能となり、求職者から見ても、企業の魅力がアップし、優秀な人材確保につながります。

Q 財形持家融資について教えて下さい。

A 先にご説明した3種類の財形貯蓄のいずれかを1年以上利用し、50万円以上の残高を保有している勤労者に対し、残高の10倍、4,000万円を上限に、事業主等を通じて、または直接に、住宅取得やリフォームのための資金の貸付けを行う制度です。

Q 財形を導入するには具体的にどうすれば?

A 財形貯蓄の導入に際しては、企業が財形制度を採用し、財形取扱金融機関を選定したうえで、勤労者から契約希望者を募る必要があります。社内の契約希望者は、財形取扱金融機関の中から貯蓄契約先を決めなければなりません。積立ては給料、賞与から事業主が天引きし、契約者に代わって財形取扱金融機関に払い込む方法、例えば賃金控除・払込代行などで行います。詳しくは取引のある金融機関にご相談ください。財形持家融資の導入に際しては、事業主は勤労者の持家取得の負担を軽減する措置(負担軽減措置)を講じる必要があります。なお、福利厚生会社を利用しての融資の場合はその必要はありません。
 制度を社内で周知するためのチラシのひな形や、負担軽減措置の種類等、財形制度の詳細は、厚生労働省HPに掲載していますので、ぜひ参考にして下さい。

Q 企業側の負担はあるのでしょうか。

A 各社の社内福利厚生業務に、財形制度に係る所用の事務処理が生じることになります。財形制度を導入している企業の事務負担としては、毎年定期(1年に1回および2回)の財形貯蓄の新規加入や月々の払込金額の変更手続きや、取扱金融機関との預入額の調整、貯蓄の払出し等があります。貯蓄の払出しは、毎月払出し申込〆日を設定し、指定した日までに払い出しを行います。

Q 財形導入企業の声を教えて下さい。

A 制度導入した企業からは、「福利厚生面で他社と差別化でき求人に有利」といった声が聞かれます。また、財形制度を導入している企業の中には、同一労働同一賃金の一環等の目的で、非正規雇用労働者も適用の対象としている企業もあります。そういった企業からは、非正規雇用労働者も正社員と同様に処遇されることによって会社への信頼感が増すといった声もありました。
 財形制度は勤労者の生活設計の一端を担うことができる制度です。ぜひ、ご活用ください。

提供:株式会社TKC(2022年10月)

(注) 当Q&Aの掲載内容は、個別の質問に対する回答であり、株式会社TKCは当Q&Aを参考にして発生した不利益や問題について何ら責任を負うものではありません。 

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